顔なじみの三十代の女性から依頼があった。友人が悩んでいるので相談にのってもらいたいという。メニューはヒーリング・クリア(Clear)。場所は紹介者の自宅ということになった。
紹介者も立ち会いたいという希望だったが、人数が複数になると、どうしてもエネルギー的に干渉が起こる。ヒーリング効果が半減してしまうことがあるのだ。そのため、いざという時は紹介者に席をはずしてもらうことを条件に会うことになった。
女性
「姑との関係で悩んでいます。結婚してから十年くらいたちますが、旦那の母親とずっと同居しているんですね。それで、とにかく姑が口うるさいんです。病気のせいもあるかもしれませんが・・・」
私
「旦那さんとの関係は、うまくいっていますか?」
女性
「はい。旦那は優しいです。」
私
「姑との間に入って、仲介してくれることはありますか?あなたの味方になってくれますか?」
女性
「う〜ん、私の味方にはなってくれますけど、あまり仲介はしてくれません。」
私
「そうですか。自分の母親なんだから、旦那さんがもうちょっと力を発揮してくれるといいんですけどね。そのあたりに不満を感じますか?」
女性
「いいえ、そこはそんなに気にしていません。」
私
「そうですか。ところで、姑から文句を言われた時に、あなたはどんな反応をしますか?」
女性
「ハイハイと聞いています。注意されたことは直そうと努力しているのですが、なかなか直らないんですよ。それでまた注意されるという繰り返しで・・・」
私
「何度も同じことを言われて、イライラしたりしますか?」
女性
「あんまりしません。やっぱり自分が悪いと思いますので。」
私
「え〜、そうやって十年間、我慢してきたのですか?すごい忍耐力ですね。ただ、この忍耐力はあまり褒められたものじゃありませんよ。あなたはB型ですよね?文句を言われて、じっと我慢できるタイプではないと思いますが・・・」
女性
「そうなんですか?血液型とかについては、あんまり考えたことがありませんので・・・」
私
「それはかまいません。でも、あなたが自分をおさえ込んでいるのは確かなようですね。どうですか?もうこの辺でそこから脱出しませんか?もう十年間も我慢してきたじゃないですか。よくがんばってきましたね。もうこれ以上、我慢を続ける必要はありませんよ。」
女性が泣いてしまった。あらら、と思った私はすかさず女性の後ろにまわり背中をさすった。
紹介者も動きは早かった。ハンカチとティッシュを用意し、本人は席をはずした。お〜、すばらしい気配り。
しばらく背中をさすっていたら、女性が落ち着きを取り戻したようだ。私はイスに座り、話し始めた。
私
「それでは、本質的なお話しをしますね。
あなたが姑からいろいろなことを言われるのは、その必要があるからです。内容が注意であれ文句であれ、そこにはあなたが気付かなければいけない何かが隠されています。何度言われてもまた同じことを繰り返してしまうというのは、そのメッセージを受けとっていない証拠です。
相手は自分の鏡なんです。相手の反応には自分の内面が映し出されています。やはり、心の中では反発しているのではないでしょうか?」
女性
「そうかもしれません。自分とあの人は違う、と思っていましたから。」
私
「あっ、別にですね、あなたが悪いと言っているのではありませんよ。ただ、そういうふうに言われる必要があるのだから、それが何なのかを意識してみましょうということです。」
女性
「姑の文句には、どんなメッセージが含まれているのでしょうか?」
私
「まずは、言われたことをそのまま受け入れてください。片付けをしないとか、思いやりがないとか言われたのなら、それは、あなたの中にそういう部分があるということを示しています。
まったくないなら、言われるわけがありません。その部分を見てみるいい機会だと思ってください。相手の言葉を受け取れそうですか?」
女性
「ん〜、今のところは難しいです。何でそんなにケチを付けるのかがわからないんですよね。」
私
「理由ははっきりしなくても、想定はできますよ。
姑は病気だと言っていましたね。なぜ病気になったのかわかりますか?それは、姑が病気になる必要があったからです。それでは、どんな必要があったのでしょうか?
病気になることで、優しくされたいということを表現したかったのかもしれません。
もっと自分のことをわかってもらいたいと思っているのかもしれません。
病気になれば、周りの人は必ず何かを感じます。気にかけてもらえます。
優しくしてもらえます。わかろうと努力してもらえます。
メッセージの内容は、発している本人も気付かないことが多いです。
本人もそのメッセージに気付く必要がありますが、それがわからないとイライラします。
何で自分が病気になるの?誰のせいなの?このツラさがあなたにはわからないの?
ということで、姑のストレスはピークに達します。
自分の器を超えた分は、外に向けるか内に閉じ込めることになります。
あなたの場合は、内に閉じ込める方を自動的に選んでいますね。
姑の場合は、内に向けて病気を悪化させ、それと同時に外に向けることも選びました。
外にもいろいろありますが、エネルギーは流れやすい方へ流れて行きます。川の流れと同じです。
文句を言ってもおとなしくしているあなたの方へ流れて行くのが自然ですね。」
女性
「あ〜、なるほど。それで私がイジメられるわけですね。」
私
「そういうことになりますね。その関係をすでに十年間も続けているわけです。
どちらも忍耐力がありますが、同時にそうとうな頑固者です。どちらもゆずりません。
どちらも相手のせいにしています。どちらも自分を謙虚に見ようとしません。
どちらかが変わらない限り、この関係はずっと続きます。
姑くらいの年になると、考え方を変えることはなかなかできません。
若いあなたの方が柔軟性があります。どうですか?自分を変えちゃう方が簡単だと思いませんか?」
女性
「そうですね。今のお話しを聞いて、何だか姑もかわいそうな思いをしてるのかなと思いました。」
私
「そうでしょう?本当はあなたの役割を旦那さんがやってくれるといいんですけどね。
それを期待できないなら、なおさらです。あなたが変わる方が早いです。
ただ、姑に同情する必要はありませんよ。
かわいそうだから受け入れてあげようとは思わないでください。
あなたに受け入れる器があるのを知っているから、姑はあなたに表現をします。
それを受け入れる器を持っていることを、あなたは知らなかっただけです。知ればいいだけです。
あなたはそんなに小さい人間じゃないでしょう?」
女性
「はい。何だか受け入れられそうな気がしてきました。」
私
「そうしてください。楽になりますよ。」
女性
「あと、もう一つ質問があるのですが・・・子供ができないんです。」
私
「子供ができにくい体質というのもあると思いますが考え方は同じです。
そうなる必要があるからそれが起こっていると考えてみてください。
ちょっと怪しい話しをしますが、子供は親を選べるんですよ。
子供からすれば平和な親の元に生まれたいですよね。
今のところ、どの子供もあなたを選びません。なぜでしょう?
あなたのストレスの受け皿になるのがイヤなのかもしれませんし、虐待される可能性も大いにありと見ているのかもしれません。せっかく生まれても、苦労するのが目に見えています。
あっちの世界から見たら、こっちの世界はバレバレなんですよ。親になる準備がまだ整っていないのかもしれませんね。」
女性
「あ〜、なるほど。もし私が子供だったら、私みたいな親は選びませんね。」
私
「そう思いますか?それなら選んでもらえるように、変わればいいんじゃないでしょうか?とは言ってもですね、親になるための修行をする必要はありませんよ。ただ単に、自分らしく生きていけばいいのですよ。」
女性
「えっ、どういうことですか?」
私
「もっとワガママになってください。たまには自分の意見を口に出してください。受け入れるものは受け入れて出すものは出す。うん○と一緒ですよ。誰がうん○をため込んでいる親を選びますか?出してスッキリしてください。」
女性
「あはははは、私はそういうふうに見られているんですかね?」
私
「そうですよ。うん○臭い親はイヤですからね。ワガママっていうのは自分勝手にということではありませんよ。もっと自分のやりたいことをやってくださいということです。言いたければ言う、やりたければやる、単純なことですよ。
そして、何でも楽しむことです。姑とのケンカも楽しんでください。黙っていたらケンカにもなりません。あなたはハイハイと返事を繰り返すだけで、相手にとっては張り合いがありません。張り合いがないと普通はあきらめますが、姑も忍耐強いですからあきらめません。十年間も静かな戦争が続いています。もっと派手にやってください。姑にも刺激が必要なんですよ。」
女性
「なるほど、言い返してもいいわけですね。」
私
「もちろん、いいですよ。コミュニケーション不足が最大の問題ですから。」
紹介者が戻ってきて、会話に加わることになった。
紹介者
「どんな感じですか?あれ、さっきより表情が明るくなったね。」
女性
「ほんと?なんかね、初めて聞くお話しばかりだったから、全部は覚えていないんだけど、心の中にあった詰まりが何だかとれたような気がするの。」
紹介者
「やっぱり話しを聞いてもらってよかったね。私じゃ、励ますことくらいしかできなかったから・・・」
私
「いやいや、それはそれで十分力になっているんですよ。
一人で全部をやろうと思わないでくださいね。人それぞれ役割がありますから。」
この日は、ここで終了となった。
後日、その女性からメールが届いた。
メール
「この前はお世話になりました。私、明るくなっていたんですね。自分のことって案外わからないものです。あれから心の声に従って行動するようになったのですが、幸せぇ〜を連発してます。
姑とも前より話しができるようになりました。この積み重ねが大事なんですね。ついにB型の血が騒ぎ出したのなら、楽しみ半分、心配半分です。でもこの際、楽しむことにしてみます。」
うれしいメールだった。ただ、子供を授からないなどの問題がいつ解決するのかはわからない。しばらく見守っていこうと思った。